帰国子女の中学受験⑭ 渋谷教育学園渋谷中学

それでは、共学化および改称して国際教育を充実させることで人気校となっていった学校の代表ともいえる渋谷教育学園渋谷中学について見ていきたいと思います。

①沿革

 ご存じの通り、渋渋の前に渋幕の成功があります。理事長兼校長である田村哲夫先生が母校である麻布高校のような共学校をつくろうというコンセプトで1983年に渋幕高校を設立したそうです。「自調自考」を根幹とし、高い倫理観及び国際人としての資質を養うという教育目標で渋幕はあっという間に有数の進学校に。これをモデルとして1996年に渋谷女子高を共学校化し、渋谷教育学園渋谷高校に改称。以来、わずか20年強しか経っていませんが、こちらも有数の進学校となっています。

ちょっと気になったのは「自調自考」は麻布ではなく武蔵の教育理念だということ・・・まあ、どっちでもいいですね。共学校で自由な校風の進学校を作ろうとしたってことです。 

②概要

渋谷から徒歩7分、神宮前から8分という抜群の立地。さすがにこの場所で広いグランドは持てないようで、登戸にグランドがあるそうです。その他の施設としては、体育館2つ、ITC室2つ、カフェテリアなど。女子トイレだけでなく男子トイレにもパウダールームがあるそうです。

1学年約200人で5~6クラス。高校での募集はない完全中高一貫型です。始業は8:20。昼食はお弁当が基本ですが、売店での購入も可能。部活動は柔道部が全国レベルを超え、世界レベル。オリンピックメダリストも輩出しています。他にも模擬国連部が世界レベルです。

③教育目標

沿革のところに書いてしまいましたが、以下の3つです。

  • 自調自考・・・「自らの手で調べ、自らの頭で考える」を基本目標として、自分で調べ、考え、判断し、責任ある行動がとれる人材を育成する。
  • 国際人としての資質を養う・・・国際的な視野を持ち、他国の文化や他国の人々の考え方を理解できる人材を育成する。
  • 高い倫理観を育てる・・・自分を律する心を養い、一人ひとりの人生をより豊かにし、人のために役に立ちたいと思う人間を育む。

まず、自調自考というのが基本目標で、各教室に掲げられているそうです。そのため、生徒の自主性を大切にしていて、実際にかなり自由な校風となっているようです。また、帰国子女の受け入れや各種国際交流イベントで、留学生の受け入れ、第二外国語の学習などで国際人の資質を養成しています。

④帰国子女のケア

クラスは一般性と同じクラスで、国際学級はありません。英語はネイティブ教員による取出し授業で、北米の学校のような授業が行われるそうです。内容は様々なタイプの英文を読み、プレゼン、ティスカッション、タームペーパー作成等、英語を使うのではなく英語で考えるためのクラスのようです。また、英語で世界史を学習したりするようです。学校ホームページでは確認できませんでしたが、場合によっては国語と数学に関しては一般の生徒にキャッチアップできるまで別クラスがあるそうです。

その他に国際交流として留学生の受け入れや、中学でのオーストラリア研修、高校での渋幕と合同の海外研修があります。

⑤その他の特徴

渋渋の学習の特徴はシラバスの存在でしょうか。中学校からシラバスが用意されている学校は珍しいと思います。シラバスには各科目ごとに1年間で学習する内容と計画が細かく書いてあるので、生徒もそれに沿って全体像を確認しなら自調自考の精神で計画的に学習できるのではないでしょうか。

渋渋と渋幕の違いですが、学校の方は「渋幕は個人で頑張るタイプ。渋渋はチームで頑張るタイプ。」とおっしゃっていました。

⑥進学実績

 2020年は現役で東大27名。国公立に現役で82名だそうです。海外大学にも25名が合格しています。進学実績がいい一番の要因については、質のいい生徒が入ってくるからとおっしゃっていましたが、謙遜でしょうか。このレベルの学校になると自分で勉強できるという生徒しかいないのでしょうか。

⑦入試

まず、入試難易度は帰国子女受験の最難関に位置しています。帰国子女受験でここと同レベルもしくは上位となるのは関連校の渋幕、横浜の聖光ぐらいだと思います。

2021年度の受験日は1月27日。

受験科目は英国算+英語面接もしくは作文国算+面接。倍率は英語選択の方が若干高いようです。

募集人員は合計12名。2020年度合格者実数は英語選択者が27名。作文選択者が36名。

英語受験を選択した場合、英語の難易度は英検準一級を超えるレベルといわれています。中学受験にして大学受験を超える難易度ということですね。差が付くポイントはエッセイだそうです。エッセイは2問出題され、A41枚ずつ、2パラグラフ程度記載する。内容は時事問題からポエムまで幅広い出題。採点はネイティブ教員が行っています。

一方で算数国語は参考程度とのことです。どういうことかというと、英語の成績で上位30名程度を選抜し、そこから25名から30名が合格することになります。国語と算数は0点でなければOKとのことです。

グループ面接も英語で行われます。6名1組でディスカッション。ネイティブ教員主導で行われます。2020年度入試では王国を守る騎士を6人の中から3人選ぶというもの。だれを選ぶか話し合う。ポイントは、聞かれたことにしっかり答えられているかだそうです。

 

 

英語受験のレベルの高さがレベルの高い英語教育を可能にしているということだと思います。まあ、さすがにこのレベルの学校を私の子供に進めることはできないので、触れずにおこうと思います。

帰国子女の中学受験⑬ 新興校vs伝統校

 帰国子女の中学受験⑫では宗教系の学校について見てみました。帰国子女枠がある23区内の中高一貫校は暁星学園と宝仙学園だけでしたがどちらも特徴的で、特に暁星学園は医学部への進学実績と文武両道なところが魅力的でした。

 

新興校vs伝統校

さて、今回は新興校と伝統校について考えてみます。まずはこれらを分ける線引きです。

ここまでいくつかの学校を見てきましたが、帰国子女枠がある学校でよく目にするのが、女子校もしくは男子校だった学校が、共学化して名前を変え、国際クラスを設けたり帰国子女を受け入れたりして進学指導に力を入れ、偏差値が上昇していくケースです。新興校と伝統校の線引きは非常に難しいのですが、ここでは分かりやすくするためにこのような学校の代表といっても過言ではない渋谷教育学園渋谷中学校(1996年渋谷女子高から改称)以降、共学化したり名前を変えたりした学校を新興校とし、それ以前から変わらない学校を伝統校として話を進めます。

帰国子女受入校に限定しないすべての学校を含むと、新興校と伝統校という線引きは難しいし無意味なのかもしれません。ただ、23区内の帰国子女受入校に限定すると、この分け方で分けることが可能かと思います。

では、帰国子女の中学受験④、⑤で記載した学校をこの基準で分けてみたいと思います。

新興校

渋渋、広尾学園、広尾小石川、都市大付属、都市大学等々力、宝仙学園

伝統校

海城、攻玉社、暁星学園

 

 こうして分けてみると、新興校の方が多いですね。帰国子女の中学受験④、⑤では山手線の内側から南西方面の学校のみ記載したので範囲から外れていましたが、開智日本橋も新興校といえると思います。あと、三田国際を忘れていました。。。申し訳ありません。。。ここも新興校ですね。都市大付属は名前は変わっているものの、男子校のままなのでどっちに入れるか迷いましたが、等々力と合わせて新興校の枠に入れておきました。こうして分けてみると、新興校は都市大付属を除いてすべて共学校ですし、伝統校はすべて男子校です。

新興校のホームページを一通り拝見しましたが、女子校から共学化した理由が明示されている学校は見つかりませんでした。やはり、教育的な理念の変化というよりは経営的判断ということなのでしょうか。とはいえ、共学校の人気が高まっているようですし、ニーズのある形態に変える、ニーズのある授業の方法を取り入れる、受験指導に注力するというのは社会からの要請に応えているとも考えられます。

新興校に多く見られる共通点をいくつか挙げたいと思います。

・女子校から共学化

・名称変更

・英語教育重視

・理科の実験重視

・いくつかのコースを設定してレベル別受験指導

・タブレットを活用した授業

・制服がブレザー

特に国際化に対応できる人材を育成するということを目標として掲げているのはどの学校にも共通するのではないでしょうか。そのため、帰国子女を受け入れ、英語のレベルアップを図っているのだと思います。だからこそ、帰国子女受入校に新興校が多いということだと思います。では、どのぐらいの割合を帰国生が占めるのか見てみたいと思います。帰国子女の実際の入学人数は、ほとんどの学校で開示されていないので、募集要項の一般入試の募集人員と帰国子女枠の募集人員を比較します。

 

渋渋・・・一般163名、帰国12名 

広尾・・・一般200名、帰国40名

広尾小石川・・・一般90名、帰国30名

都市大・・・一般240名、帰国若干名

等々力・・・一般180名、帰国20名

宝仙・・・一般125名、帰国15名

三田国際・・・一般160名、帰国20名

開智日本橋・・・一般130名、帰国20名

帰国子女受験の中にも、試験科目に英語を含むのもと含まないものがありますが、募集人員を分けて記載していないケースもあるので、単純に帰国子女枠の合計を記載しました。また、一般入試でも英語で受験できるケースもありますが、こちらは一般に含めています。広尾小石川は2021年度入試が1回目なのでまだよくわかりませんが、広尾学園は帰国子女の募集人数も割合も一番多いですね。

 

こうして見ると、どの学校も帰国子女を全体の10%から20%にしようとしているようです。その上で、英語入試で入学した生徒に対してどのようなサポートをしてくれるのか、どのように英語教育を行うかは次の3パターンに分かれていると思います。

①グローバルコース等の名称で国際学級をつくる

②一般生と同じクラスで英語だけでなく算数国語もレベル別授業を行う

③一般生と同じクラスで英語のみレベル別の取出し授業を行う

勉強の面からみれば①が最も手厚く、②がその次ということになります。ただ、様々なタイプの人と接するためには国際学級ではなく、一般生と同じクラスになって机を並べた方がいいという考えもあるので、②のタイプも帰国子女に優しいと言えると思います。③の場合は、英語以外の科目で一般生についていけるように最初のうちは苦労するのではないでしょうか。

 

では、帰国子女に対して実際どのようなサポートをしているのか、それ以外の特徴と共に何校か見ていきます。まず、帰国子女の中学受験⑭では新興校の先鞭をつけた渋渋から見ていこうと思います。

帰国子女の中学受験⑫ 宗教系(暁星学園、宝仙学園)

帰国子女の中学受験⑪では、共学校と男子校の違いについてみてみました。

このほかにも、学校を分ける切り口としては、宗教vs無宗教、新興vs伝統などが考えられます。まず、宗教vs無宗教について考えてみます。

宗教vs無宗教

宗教に拒絶反応を起こす方もいらっしゃると思います。私自身も特に信じている宗教はありません。ですので、子供がどこかの宗教の考え方に偏ったりする可能性を考えると、宗教系の学校は敬遠したくなる気もします。しかし、青学や立教はキリスト教系の学校ですが気にならないですし、特に女子校にはキリスト教系の学校が多いようなイメージがあります。逆に男子校では宗教関連の学校があまり思い浮かびません。

そこで、前回も利用した「study中学受験」で、23区内の共学校と男子校の宗教関連の学校を調べてみました。(太字は帰国子女受入校)

①カトリック

暁星学園

②プロテスタント

青山学院中等部、聖学院、立教池袋

③仏教

佼成学園、駒込中学、淑徳、淑徳巣鴨、芝、宝仙学園理数インター、世田谷学園、東京立正中学、立正大学付属中学

 

まずは、23区内にこれしかないというのに驚きました。また、キリスト教系の学校より、仏教系の学校の方が多いことも私のイメージと違っていました。ちなみに、女子校はキリスト教系が17校、仏教系が2校でした。やっぱり女子校はキリスト教系が多いんですね。

早速、これらの学校のホームページをいくつか拝見しました。教育理念に宗教観が反映されていて、いわゆる道徳教育が行われているケースが多いようです。宗教そのものというよりも、宗教観をベースとした人格形成という感じです。帰国子女受入校は大学付属校の立教池袋を除くと、2校しかないので、それぞれ宗教観がどのように教育方針及び活動に反映されているか確認し、その他の特徴についても簡単に見ていこうと思います。

 

暁星学園

暁星学園は九段下にあるカトリック系の男子校です。1888年にフランス人宣教師によって設立されました。そのため、現在でもフランス語の授業が行われていて、第一外国語をフランス語にすることも可能です。卒業式にフランス大使が来たり、式典で君が代の後にフランス国家を歌うなど、フランスとのつながりが強いです。学校は幼稚園から高校までの一貫校で、特に小学校お受験界では難関校として知られているようです。

①宗教教育

建学の精神は、 キリスト教の理念に基づいて、人格の完成と社会の福祉に貢献する人間の育成することです。自己の能力、才能を活かして社会に貢献する人間を育てることを根本方針としています。授業としては週に1回宗教の時間があるそうです。その他に、クリスマスミサや宗教講和などのイベントがあります。幼稚園から通っている生徒もいるので、宗教観が浸透し、学校の雰囲気に反映されているようです。

②英語教育

 語学教育には力を入れていて、英語は4クラスを6つに分けて少人数授業を行っている。ただ、疑問に思うのは、中学1年2年はレベル別クラスではないということ。レベル別になるのは中学3年からだそうです。

③その他の特徴

この学校は医者の子弟が多いようで(特に小学校からの進学者)、医学部への進学割合が高いです。その点からも、宗教に基づく道徳教育は重要だと考えているようです。高校では卒業生の医師の講演や医療実習なども行われているそうです。

④入試関連

 2021年度の受験日は12月5日。科目は国算に加え、英語かフランス語の選択。面接は日本語と選択した外国語で行われます。定員は若干名と記載されていてはっきりしないのですが、2018年と2019年の合格者数は2~3名程度でした。ところが、2020年は13名合格しています。受験者数も増えているのですが理由はよくわかりません。今年の入試がどうなるかちょっと気になります。

⑤雑談

あまり受験とは関係ないのですが、私がこの学校を知ったのは、ドラマ「半沢直樹」出演者に暁星出身者が多いというネットニュースを見たからです。北大路欣也や香川照之の出身校らしいです。他にも歌舞伎役者やホリプロの堀社長など、多くの有名人が卒業しています。

進学実績も素晴らしいです。卒業生はだいたい170人前後ですが、東大、東工大等の難関国立大に加え、国立医学部への進学者も多いです。2020年は現役で65名が医学部に合格しています(たぶん延べ人数です)。

九段下という東京のど真ん中にあるにもかかわらず、人工芝の広いグランド、プール、体育館等の施設も充実しているので部活にも打ち込めそうです。特にサッカー部は有名で、全国レベルです。他には水泳部や競技かるた部が全国レベルです。まさに文武両道ですね。

ただ、「暁星学園 事件」と検索すると、物騒な事件がヒットします。

 

130年を超える伝統と宗教観をベースとした教育が行われていて、語学教育にも注力しています。進学実績からも生徒に合わせたきめ細かい指導がされていることが伺えます。ただし、英語のレベル別クラスがなぜ中学3年からなのか???ちょっと不思議な感じがしました。医師志望の方にはかなりいい学校ではないでしょうか。なお、千葉にある暁星国際とは現在は無関係らしいです。

 

宝仙学園共学部理数インター

1927年に真言宗の宝仙寺が幼稚園を設立し、その後大学まで設立されています。幼稚園から大学まで、すべて中野坂上にある宝仙寺の周辺に集まっています。もともとは女子校でしたが、2007年に共学部理数インターを設置。現在は高校のみ女子部が存在するようです。

①宗教と教育

仏教教育を基調とした人間教育によって、品格と知性を兼ね備えた「人を造る教育」を基軸 に置いています。これを実現するために、グローバル教育、リーダー教育、情操教育の3つを展開しています。特に情操教育は宗教観と結びついているようですが、宗教の授業は行われていません。宗教的な雰囲気の中で学校生活を送ることにより自然に感得するとされています。イベントとしては花まつりやみたままつり等の仏教行事が年間5回あり、宝仙寺住職の講話を聴くそうです。

②英語教育

グローバルコースに入ると週7回の英語の授業がすべて取出し授業となります。目安は入学時点で英検準2級程度でネイティブ教員とコミュニケーションが取れるレベルとのこと。通常授業以外には、海外研修、英語体験研修(セブ島)、短期留学、模擬国連等の機会があるようです。

③その他の特徴

名前にも入っている「理数インター」については、独自の理数インターという科目が各学年週1回行われます。理数的思考力、すなわち物事を論理的に考え伝える能力で、人と人を結び付けられる人材を育てる複合教科です。サイエンス、ICT、グローバル教育の要素を入れ、専門の異なる教師によるチームティーチングが行われます。答えのない問いへ数理的思考でアプローチし、コミュニケーション力とプレゼンテーション力を深めるそうです。

④入試関連

こちらは様々なタイプの入試が用意されています。帰国子女が受ける試験としては、日本で受験するなら選択2科型の英算+英語面接もしくはグローバル型の書類選考、日本語面接、英語面接の2タイプから選ぶことになりそうです。2021年度の試験日は12月12日となっています。これらの入試の募集人員は10名とされていますが2020年度実績では29名が合格しています。

⑤雑談

宗教関係の学校ですが、前述の暁星学園と比べ、ホームページから感じる宗教色はかなり薄いと思います。共学化して共学部理数インターとなってから10年強ですが、色々なタイプの入試を実施して多様な生徒を集め、新しいタイプの教育で進学実績を伸ばしていく過程にあるのかなという感じがします。ですので、ホームページ等では宗教観や人間教育よりも具体的な教科の説明や進学実績のアピールが目立っていました。なお、2020年度大学入試の結果は、グローバルコース5期生13名から、国公立では医科歯科大及び横浜市立大に合格者がでています。私立でも早慶をはじめ、多くの大学に合格しているようです(合格者数は明示されていません)。学校行事よりも受験指導に比重を置いている印象を受けました。

 

暁星学園と宝仙学園を見てみましたが、伝統的な道徳教育と文武両道を求めるなら暁星学園、教科にとらわれない新しいタイプの総合学習と手厚い受験指導を求めるなら宝仙学園という感じでしょうか。

帰国子女の中学受験⑪ 男子校vs共学校

帰国子女の中学受験⑦から⑨で大学付属校について検討してみました。

個別の学校を見てみると、教育理念に基づいて独自の取り組みが行われていて魅力的だと感じました。また、付属校ならではの余裕、つまり大学受験に縛られないカリキュラムや充実した施設、大学との連携が図られていて、付属校に行くメリットは大学受験の回避だけではないということがよくわかりました。

一方で、我が家の事情ですとやはり以下の2点が気になってしまうところです。

①小学生のうちに事実上大学まで決めてしまうのは、本当に子供のためになるのか

②英語力を向上させたい(ネイティブ並みに)が、多くの付属校では難しそう

 

そこで、ここからは中高一貫校のみを対象として志望校を検討していきます。

まずは、男子校vs共学について検討します。

帰国子女の中学受験④、⑤で記載した一貫校を男子校と共学校に分けてみます。

男子校

暁星学園中学校、東京都市大学付属中学校、海城中学校、攻玉社

共学校

広尾学園小石川、東京都市大学付属等々力、宝仙学園中学校共学部理数インター、広尾学園、渋谷学園渋谷中学校

 

①それぞれのメリット

私は 中高共に共学でしたので男子校経験はありません。ですので、男子校については実態を知りません。このブログを書き始める前は「中高の多感な時期に男子としか接しないなんて不健全だ」と思っていましたし、実際にそういう声も少なくないと思います。男子校にメリットなんてある??と思っていましたが、実際に各校のホームページ等を拝見して、今ではどっちも利点があって、子供の性格や各家庭の考え方次第だと考えています。

ここで、一般的に言われている男子校と共学のメリットをそれぞれ見ておきたいと思います。

男子校のメリット

・異性の目を気にせず、趣味や好きなことに没頭できる

・勉強に集中できる

・結束が固い(いじめが少ない?)

共学校のメリット

・多様な価値観に触れ、社会性が醸成される

・自制心を保つことができる

・異性の目をモチベーションに変えられる

 

要約すると

男子校は異性がいないので男同士で楽しく過ごせて勉強に集中できる 

共学校は異性と触れることで多様な立場の人とコミュニケーションがとれる

こんな感じでしょうか。デメリットはただの裏返しなので省略します。

男同士の方が楽しいのか、女子もいた方が楽しいのか、、、人それぞれでしょうか??

 

②「男子校は勉強に集中できる」は本当か?

ちょっと気になるのは、男子校だと異性がいないので勉強に集中できるってことです。

これは、「男子校の方が成績がいいですよ」っていう意味ですよね?この真偽を確認するため、本来は、入学時から卒業時までの伸びを測定したかったのですが、手段が思い浮かびませんでした。。。

次善の策として入学時の偏差値を見ていくことにします。(入学後に学力を伸ばしてくれる学校は人気が高まり、入学時偏差値も上がっていくので概ね外れてはいないと考えます。)

今回利用したサイトは「study中学受験」です。登録されている23区内の学校は150校。「中学受験高校受験パスナビ」というサイトでは、148校でしたので網羅性は問題なさそうです。(差の2校のうち1校は広尾学園小石川でしがもう1校は不明。)

23区内150校の内訳を見てみます。共学66、男子校28、女子校56で共学比率は44%、男子校比率は18.7%でした。

次に、偏差値50以上に絞ると、全体で65校、共学26、男子校20、女子校19となり、共学比率は40%、男子校比率は30.8%となります。18.7%から30.8%まで上がったので、男子校は偏差値50以上の学校の比率が高いと言えそうです。一方、共学はあまり変化していないです。

更に、偏差値60以上に絞ると、全体で36校、共学13、男子校13、女子校10となり、共学比率36.1%、男子校比率36.1%となります。母集団は男子校の方が半分以下なのに偏差値60以上に絞ると同じ比率になりました。ここから、男子校は共学校と比べて偏差値が高い学校の比率が高いと言えます。

これだけを見ると、「男子校は勉強に集中できる」という結論になりそうな気もします。しかし、女子校にも「異性の目を気にせず~~」というのは当てはまるはずですよね?女子校は男子校とは逆に偏差値を上に絞っていくと比率は下がっていくので、やっぱり共学と別学は学力とは関係ないというのが私の結論です。いかがでしょうか??

③結局、共学校と男子校はどっちがいいのか

私は、ダイバーシティの観点からは、共学がいいかなというように思っています。ただ、近年は共学校の方が人気があるようで、男子校や女子校が共学化するケースが見られます。これは、共学の方が魅力的だと感じている人が多いということなのでしょうか。

この点、某男子校の先生に共学化する予定はないか聞いたことがあります。その方は、次のようにおっしゃっていました。

「男子と女子は成長の仕方に明確な違いがあり、それぞれに合った教育方法があります。ですので、当校は男子の成長に合わせ、男子特有のこだわりを大切に育てるような教育をしています。少子化の時代ですから、学校経営的には共学にした方がいいのかもしれません。しかし、私たちは信念をもって教育をしていますので、共学に変えるようなことは検討していません。」

このように明確な信念をもって生徒を育てようとしてくれる学校に子供を預けたいなと思いました。結論としては、共学校でも男子校でもそこに明確な理由やポリシーがあり、生徒の人間力を高めようとしてくれる学校を選べたらいいと思います。 

 

~おまけ~

一応、偏差値60以上の学校名を確認してみました。(太字は帰国子女受入校)

共学校は、慶應中等、渋渋、筑附、お茶女(中学まで共学)、広尾、青学、学世田、農大一校という結果でした(残りは都立と区立なので省略します)。

男子校は、筑駒、開成、麻布、早稲田、海城、芝、武蔵、本郷、攻玉社、駒場東邦、巣鴨、高輪、都市大付属という結果でした。

なお、偏差値は四谷大塚結果80偏差値だそうです。

帰国子女の中学受験⑩ 英語受験と英語の授業

さて、次に中高一貫校の学校の選定を検討しようと思いましたが、慶應湘南藤沢中等部(SFC)と中央大学附属中学校(中附)の違いで気になったところがあったので、ちょっと書いておこうと思います。

それは、受験科目と入学後の英語教育の関係についてです。

・入試は学校から受験生へのメッセージ

受験科目や試験の問題については、学校側から受験生へのメッセージが込められていると思います。つまり、入試は学校が生徒を選ぶ唯一の手段ですから、どんな生徒に来て欲しいのかが試験問題に反映されているのです。「この問題が解けるような子に来て欲しい」という問題を出題しているわけです。

 

・英語の授業のレベルは英語入試のレベルで決まる

ここで、入試科目に英語がある場合、問題のレベルにもよりますが、高い英語力を持った生徒を一定数確保したいという意思の表れだと思います。英語入試で集めた英語圏で現地校に通っていた子や非英語圏でインターに通っていた子を集めるわけです。こうして集めた生徒に対してレベル別の授業を行い、ネイティブの子と変わらない英語力に維持向上させるのです。

逆に、英語入試で一定数の生徒を確保しないとレベルの高い授業が成立しなくなってしまうのです。つまり、受験科目が’算国2科目だったり、算国作文のように英語が受験科目にない学校については、英語の取出し授業を行っていないケースが多いと考えられます。また、英語が受験科目にない学校で英語の取出し授業をやっている場合、その取出し授業のレベルと英語受験の生徒を集めた取出し授業のレベルが同程度とは思えませんよね。英語入試の定員数が少ない学校も同様です。

 

・レベルの高い英語力を身に着けたいなら

帰国子女枠で確保される英語受験生のレベルが、その後の取出し授業のレベルに反映されると考えられます。高いレベルの英語の授業を望むなら、レベルの高い英語の問題を出題している学校に進学すべきということになります。

反対に、英語の入試が子供の英語力をはるかに上回る場合、入学後のレベル別授業で上のクラスに選ばれない可能性もありますし、上のクラスに入ってもついていけない可能性があると思います。

ですので、子供の英語力を維持向上させるということを私立中学進学の目的の一つとするなら、受験科目の英語の有無やそのレベルを確認するのは大切なことといえそうです。

SFCと中附で比べると、中附は受験科目に英語はありませんし面接で英語を使うこともないようですが、SFCは非常にレベルの高い英語の問題を出題しているようですし、帰国子女の受け入れ枠も多いです。ですので、SFCではレベル別の英語の授業が行われ、そのレベルも相当程度高いものと推測できます。一方、中附では入学後も英語の取出し授業は行われていないようです。

帰国子女の中学受験⑨ 中央大学付属中学校

帰国子女の中学受験⑧では慶應SFCについて書きました。SFCは付属校のメリットを最大限に享受できるすばらしい学校だと思いましたが、やはり中学入学時点で大学まで将来が固定化されてしまうという付属校のデメリットはあるわけです。そこで私が気になったのは中央大学付属中学校です。この学校は中学校入学時点で大学まで固定化されてしまうという付属校のデメリットが少ないのです。

この学校はほぼ全員が中央大学のいずれかの学部に推薦枠で入学可能です。普通の付属校では、他大学を受験する場合、推薦枠を放棄して受験にチャレンジすることとなります。せっかく持っていた受験なしで大学に行ける権利を放棄しなければなりません。しかし、中大付属では国公立や私大でも中央大学にない学部・学科であれば推薦枠を保持したまま他大学を受験可能となっています。また、指定校推薦やAO入試での他大学進学も可能です。他大学受験希望者に対しては、受験用のクラス編成を行い、サポートもしてくれるようです。ちなみに、中央大学への進学率は85~90%だそうです。

では、その他の特徴を見ていきたいと思います。

①教育方針、特色

「自主・自治・自律」を基本精神として未来を切り拓く力を育てることを目的としています。これを達成するため、「環境」を整備し多様かつ良質な「教育」を行い「体験」を積ませることを重視しています。「環境」としては共学少人数制学級で生徒の自主性を尊重したイベントや生徒会、クラブ活動が整備されています。「教育」は移動教室、プロジェクトインサイエンス等の幅広いカリキュラムが用意されています。「体験」としては6年間で160冊の課題図書を読んだり、週に1回スクールランチをクラスごとにとって食育を行うなど、独特の取り組みが行われています。

また、基本精神を反映して、非常に自由な校風なようです。特に高校になると制服もなくなり、校則もほとんどないそうです。

②英語教育

レベル別の取出し授業はないようですが、ネイティブスピーカ指導の下、身近なテーマについて調べた内容を英語で発表するプロジェクトインイングリッシュで英語の表現力を高めます。また、各学年で国際交流イベントが用意されていて、台湾・オーストラリア・イギリスの学校との交流が行われています。その他にターム留学や単位認定留学も用意されているようです。

③特徴的な教育

多くの独特な取り組みが行われているようですが、その中でも6年間で160冊の課題図書を読むというのは他校ではなかなか見られないものと思います。どのように読了を確認するのかというと、定期試験の国語で課題図書を読んでいないと回答できない問題が出るそうです。多くの大学付属校で定期試験は重要な意味があります。それは、通常、大学の学部選択において成績上位者から順に希望学部が割り当てられるからです。ですので、課題図書をしっかり読むことになると思われます。中高の時期に多種多様な本を読むことは知見を広げる意味でも、読書習慣をつける意味でもすばらしいことなのではないでしょうか。

④大学との連携

中央大学の看板学部といえば法学部ですよね。その法科大学院で講習を受けたり模擬法廷教室を体験できる機会が設けられています。また、理数系教育を中央大学理学部での教育と接続する取り組みとして、大学教職員の派遣・大学授業や施設の開放などが行われています。

 その他、オープンキャンパス、特別授業、簿記講座、英語スピーチコンテストなど、各種イベントが行われています。

 

このように、中大付属中学校は中央大学への推薦枠を確保できるというメリットを残したまま他大学も受験可能であり、大学との連携等の付属校のメリット享受できる素晴らしい学校だと思います。また、帰国子女にとっては自由な校風が海外生活と親和性が高く、大変魅力的な学校だと思います。また、施設も充実していて、図書館の蔵書は18万冊以上ですし、人工芝の広いグランドやランチルームなど、さすが大学付属校という感じがします。ただ、欠点のない学校などありません。以下で、私が気になった点をいくつか書いてみます。

①場所

こちらも慶應SFCほどではありませんが、都心から離れています。最寄り駅は中央線で新宿から30分程度の武蔵小金井駅。そこからバスで10分ほどだそうです。中央線沿線の方は気にならないかもしれませんが、他の沿線だと、新宿まで出て、そこからバスを含めて40分。乗り換え時間や待ち時間を含めると新宿から1時間弱ですね。

②英語の授業

そもそも中学受験をしようと思ったきっかけは、 英語力を維持向上させるためです。英語に関しては様々な取り組みが行われているようですが、レベル別授業にではなく一般生と同じ授業なので、当然そこに合わせた授業になると考えられます。そうすると、他のレベル別授業で英語力を伸ばしてくれそうな学校を検討した方がいいのかなと。。。。。

③他大学を目指したくなった場合

確かに、推薦枠を保持したまま他大学受験が可能なのですが、9割近い人が付属大学に進学する中で、受験勉強に取り組むには鉄のメンタルが必要ですよね。私だったら周りに流されて勉強できないと思います。

 

総合的にみると、自由な校風・独自のカリキュラム・充実した施設・大学との連携など、非常に魅力的な学校といえそうです。ただ、我が家の場合、英語教育という点に着目すると一般生と同じ授業を受けることになりそうなので、当初の中学受験の目的から外れてしまう点が残念です。

せっかくなので、最後に受験について確認しておきます。

2021年度入試の受験日は一次試験が12月21日、2次試験が12月22日です。

科目は算国の2科目。一次試験の過去問はホームページで公開されています。現在見ることのできる2020年度入試の問題では、算数は帰国子女用の問題なので一般生の問題より難易度抑え目だと思います。ただ、国語は漢字や慣用句の知識問題と文を読んでの要約と意見を記載する記述問題のみです。文字数は要約が100文字、意見が400文字と多くはありませんが、日本語作文の練習が必要かもしれません。

二次試験は提示された資料についてのグループディスカッションと個人面接が行われます。なお、英語での質問はないようです。

帰国子女の中学受験⑧ 慶応義塾湘南藤沢中等部

東京近郊の帰国子女受験枠のある早慶GMARCHの付属校については「帰国子女の中学受験③」に書いた通り、理社なしで受験できるのは慶應湘南藤沢中等部(SFC)、学習院中等科、青山学院横浜英和、立教池袋、立教新座、中大付属、法政第二の7校でした。

この中で、帰国生の受け入れに最も積極的なのは慶應SFCだと思います。ですので、「帰国子女の中学受験⑦」に書いた付属校のメリットとデメリットを踏まえて慶應SFCの特徴を見てみます。

 

慶応義塾湘南藤沢中等部の特徴

SFCの帰国枠受験では、募集人員30名となっていますが例年40名程度の最終合格者が出ているようです。これは帰国生受入校の中でも多い方です。全生徒に対する帰国生割合は中学で20%、高校では25%になるそうです。

①教育方針、特色

 「社会的責任を自覚し、独立自尊の精神を体現した未来の先導者」を育てることを目的としています。「社会の良識が校則」という考えに基づき、自由な雰囲気のもと責任についての自覚を身につける。また、国際的に活躍するのに不可欠な語学と情報リテラシーを身につける教育に力を注ぎ「異文化交流」と「情報教育」を大きな柱としている。

2人担任制や少人数授業できめ細かい指導を行い、SFC高等部から慶應義塾大学の全10学部に進学することができる。

 ②英語教育

帰国生の割合が高く、交換留学生も受け入れているため自然に異文化交流が生まれる。授業はレベル別。英語で他者の意見を理解すると共に自分の意見も発信していけるようになることを目指す。教科書だけでなく、英字新聞、映画、ドラマなども用いて表現方法などを学ぶ。独自の短期留学プログラムや派遣留学制度がある。

 ③情報教育 

「異文化交流」ともう一つの柱である「情報教育」も充実しています。単にプログラミングを学ぶのではなく、情報と社会の関わりを学び、これからの社会をどのようによくしていくか考えられる人間の育成を目指しているとのこと。そのため、独自の教科「情報」を設けていて、その教育を可能とする設備も整っています。

④大学との連携

まず、敷地が大学のキャンパスと隣接しています。大学の購買や食堂も利用できるようです。学習面では、大学進学を見据えて論文実習や第二外国語等の幅広い科目が用意されています。また、現役大学生や大学OBとの交流、キャリア教育が行われるようです。

 

このように、英語教育が充実しており、帰国生にとって生活しやすい環境で大学受験を気にすることなく自分の興味のあるものに取り組める素晴らしい学校だと思います。また、設備や大学との連携等、付属校としてのメリットを最大限生かしていると思います。

ただ、欠点もあります。私が気になったのは以下の3点です。

①場所

その名の通り、神奈川県の藤沢市にあるのですが、湘南のイメージはなく、山の中です。近くの養豚場の香りが漂ってくるという噂も。最寄り駅の湘南台駅からバスで15分から20分。始業が8時40分と若干遅めですが、都心から通うのはなかなか時間がかかります。朝の時間帯に新宿や渋谷からだと1時間以上かかるようです。6年間続くことなので、どこに住んでいるかによって、かなりデメリットといえるのではないでしょうか。

②費用

初年度納付金が149万5千円、6年間だと軽く700万円を超えます。公立とは比べるまでもないですが、他の私立一貫校、付属校の中でもかなり高い方です。同じ慶應の普通部や中等部よりも高いです。SFC高等部も国内慶應付属校の中では最も高額です。

③入試の難易度

 一次試験の受験科目は帰国生、一般生ともに英算国か算国理社の選択です。受験日も一般性と同じ。問題も一般性と同じです。一次試験合格者のみ二次試験があります。もちろん、帰国子女受験における大学付属校最難関です。入試のことは書くと長くなるので今日はここまでにしておきます。

 

SFCは付属校のメリットをたっぷり享受できる素晴らしい学校ですね。こんな学校で生活できたら楽しそうだなぁと思います。普通にしていれば必ず慶応大学に入れる点も魅力的です。でも、デメリットで書いた3つがあまりにも重いです。特に③入試の難易度は厳しいですね。慶應を受験するような一般生と同じ問題ができるようになるには、相当な覚悟が必要かと。。。。。やっぱり別の学校も見てみましょう。