帰国子女の中学受験⑨ 中央大学付属中学校

帰国子女の中学受験⑧では慶應SFCについて書きました。SFCは付属校のメリットを最大限に享受できるすばらしい学校だと思いましたが、やはり中学入学時点で大学まで将来が固定化されてしまうという付属校のデメリットはあるわけです。そこで私が気になったのは中央大学付属中学校です。この学校は中学校入学時点で大学まで固定化されてしまうという付属校のデメリットが少ないのです。

この学校はほぼ全員が中央大学のいずれかの学部に推薦枠で入学可能です。普通の付属校では、他大学を受験する場合、推薦枠を放棄して受験にチャレンジすることとなります。せっかく持っていた受験なしで大学に行ける権利を放棄しなければなりません。しかし、中大付属では国公立や私大でも中央大学にない学部・学科であれば推薦枠を保持したまま他大学を受験可能となっています。また、指定校推薦やAO入試での他大学進学も可能です。他大学受験希望者に対しては、受験用のクラス編成を行い、サポートもしてくれるようです。ちなみに、中央大学への進学率は85~90%だそうです。

では、その他の特徴を見ていきたいと思います。

①教育方針、特色

「自主・自治・自律」を基本精神として未来を切り拓く力を育てることを目的としています。これを達成するため、「環境」を整備し多様かつ良質な「教育」を行い「体験」を積ませることを重視しています。「環境」としては共学少人数制学級で生徒の自主性を尊重したイベントや生徒会、クラブ活動が整備されています。「教育」は移動教室、プロジェクトインサイエンス等の幅広いカリキュラムが用意されています。「体験」としては6年間で160冊の課題図書を読んだり、週に1回スクールランチをクラスごとにとって食育を行うなど、独特の取り組みが行われています。

また、基本精神を反映して、非常に自由な校風なようです。特に高校になると制服もなくなり、校則もほとんどないそうです。

②英語教育

レベル別の取出し授業はないようですが、ネイティブスピーカ指導の下、身近なテーマについて調べた内容を英語で発表するプロジェクトインイングリッシュで英語の表現力を高めます。また、各学年で国際交流イベントが用意されていて、台湾・オーストラリア・イギリスの学校との交流が行われています。その他にターム留学や単位認定留学も用意されているようです。

③特徴的な教育

多くの独特な取り組みが行われているようですが、その中でも6年間で160冊の課題図書を読むというのは他校ではなかなか見られないものと思います。どのように読了を確認するのかというと、定期試験の国語で課題図書を読んでいないと回答できない問題が出るそうです。多くの大学付属校で定期試験は重要な意味があります。それは、通常、大学の学部選択において成績上位者から順に希望学部が割り当てられるからです。ですので、課題図書をしっかり読むことになると思われます。中高の時期に多種多様な本を読むことは知見を広げる意味でも、読書習慣をつける意味でもすばらしいことなのではないでしょうか。

④大学との連携

中央大学の看板学部といえば法学部ですよね。その法科大学院で講習を受けたり模擬法廷教室を体験できる機会が設けられています。また、理数系教育を中央大学理学部での教育と接続する取り組みとして、大学教職員の派遣・大学授業や施設の開放などが行われています。

 その他、オープンキャンパス、特別授業、簿記講座、英語スピーチコンテストなど、各種イベントが行われています。

 

このように、中大付属中学校は中央大学への推薦枠を確保できるというメリットを残したまま他大学も受験可能であり、大学との連携等の付属校のメリット享受できる素晴らしい学校だと思います。また、帰国子女にとっては自由な校風が海外生活と親和性が高く、大変魅力的な学校だと思います。また、施設も充実していて、図書館の蔵書は18万冊以上ですし、人工芝の広いグランドやランチルームなど、さすが大学付属校という感じがします。ただ、欠点のない学校などありません。以下で、私が気になった点をいくつか書いてみます。

①場所

こちらも慶應SFCほどではありませんが、都心から離れています。最寄り駅は中央線で新宿から30分程度の武蔵小金井駅。そこからバスで10分ほどだそうです。中央線沿線の方は気にならないかもしれませんが、他の沿線だと、新宿まで出て、そこからバスを含めて40分。乗り換え時間や待ち時間を含めると新宿から1時間弱ですね。

②英語の授業

そもそも中学受験をしようと思ったきっかけは、 英語力を維持向上させるためです。英語に関しては様々な取り組みが行われているようですが、レベル別授業にではなく一般生と同じ授業なので、当然そこに合わせた授業になると考えられます。そうすると、他のレベル別授業で英語力を伸ばしてくれそうな学校を検討した方がいいのかなと。。。。。

③他大学を目指したくなった場合

確かに、推薦枠を保持したまま他大学受験が可能なのですが、9割近い人が付属大学に進学する中で、受験勉強に取り組むには鉄のメンタルが必要ですよね。私だったら周りに流されて勉強できないと思います。

 

総合的にみると、自由な校風・独自のカリキュラム・充実した施設・大学との連携など、非常に魅力的な学校といえそうです。ただ、我が家の場合、英語教育という点に着目すると一般生と同じ授業を受けることになりそうなので、当初の中学受験の目的から外れてしまう点が残念です。

せっかくなので、最後に受験について確認しておきます。

2021年度入試の受験日は一次試験が12月21日、2次試験が12月22日です。

科目は算国の2科目。一次試験の過去問はホームページで公開されています。現在見ることのできる2020年度入試の問題では、算数は帰国子女用の問題なので一般生の問題より難易度抑え目だと思います。ただ、国語は漢字や慣用句の知識問題と文を読んでの要約と意見を記載する記述問題のみです。文字数は要約が100文字、意見が400文字と多くはありませんが、日本語作文の練習が必要かもしれません。

二次試験は提示された資料についてのグループディスカッションと個人面接が行われます。なお、英語での質問はないようです。