帰国子女の中学受験⑬ 新興校vs伝統校

 帰国子女の中学受験⑫では宗教系の学校について見てみました。帰国子女枠がある23区内の中高一貫校は暁星学園と宝仙学園だけでしたがどちらも特徴的で、特に暁星学園は医学部への進学実績と文武両道なところが魅力的でした。

 

新興校vs伝統校

さて、今回は新興校と伝統校について考えてみます。まずはこれらを分ける線引きです。

ここまでいくつかの学校を見てきましたが、帰国子女枠がある学校でよく目にするのが、女子校もしくは男子校だった学校が、共学化して名前を変え、国際クラスを設けたり帰国子女を受け入れたりして進学指導に力を入れ、偏差値が上昇していくケースです。新興校と伝統校の線引きは非常に難しいのですが、ここでは分かりやすくするためにこのような学校の代表といっても過言ではない渋谷教育学園渋谷中学校(1996年渋谷女子高から改称)以降、共学化したり名前を変えたりした学校を新興校とし、それ以前から変わらない学校を伝統校として話を進めます。

帰国子女受入校に限定しないすべての学校を含むと、新興校と伝統校という線引きは難しいし無意味なのかもしれません。ただ、23区内の帰国子女受入校に限定すると、この分け方で分けることが可能かと思います。

では、帰国子女の中学受験④、⑤で記載した学校をこの基準で分けてみたいと思います。

新興校

渋渋、広尾学園、広尾小石川、都市大付属、都市大学等々力、宝仙学園

伝統校

海城、攻玉社、暁星学園

 

 こうして分けてみると、新興校の方が多いですね。帰国子女の中学受験④、⑤では山手線の内側から南西方面の学校のみ記載したので範囲から外れていましたが、開智日本橋も新興校といえると思います。あと、三田国際を忘れていました。。。申し訳ありません。。。ここも新興校ですね。都市大付属は名前は変わっているものの、男子校のままなのでどっちに入れるか迷いましたが、等々力と合わせて新興校の枠に入れておきました。こうして分けてみると、新興校は都市大付属を除いてすべて共学校ですし、伝統校はすべて男子校です。

新興校のホームページを一通り拝見しましたが、女子校から共学化した理由が明示されている学校は見つかりませんでした。やはり、教育的な理念の変化というよりは経営的判断ということなのでしょうか。とはいえ、共学校の人気が高まっているようですし、ニーズのある形態に変える、ニーズのある授業の方法を取り入れる、受験指導に注力するというのは社会からの要請に応えているとも考えられます。

新興校に多く見られる共通点をいくつか挙げたいと思います。

・女子校から共学化

・名称変更

・英語教育重視

・理科の実験重視

・いくつかのコースを設定してレベル別受験指導

・タブレットを活用した授業

・制服がブレザー

特に国際化に対応できる人材を育成するということを目標として掲げているのはどの学校にも共通するのではないでしょうか。そのため、帰国子女を受け入れ、英語のレベルアップを図っているのだと思います。だからこそ、帰国子女受入校に新興校が多いということだと思います。では、どのぐらいの割合を帰国生が占めるのか見てみたいと思います。帰国子女の実際の入学人数は、ほとんどの学校で開示されていないので、募集要項の一般入試の募集人員と帰国子女枠の募集人員を比較します。

 

渋渋・・・一般163名、帰国12名 

広尾・・・一般200名、帰国40名

広尾小石川・・・一般90名、帰国30名

都市大・・・一般240名、帰国若干名

等々力・・・一般180名、帰国20名

宝仙・・・一般125名、帰国15名

三田国際・・・一般160名、帰国20名

開智日本橋・・・一般130名、帰国20名

帰国子女受験の中にも、試験科目に英語を含むのもと含まないものがありますが、募集人員を分けて記載していないケースもあるので、単純に帰国子女枠の合計を記載しました。また、一般入試でも英語で受験できるケースもありますが、こちらは一般に含めています。広尾小石川は2021年度入試が1回目なのでまだよくわかりませんが、広尾学園は帰国子女の募集人数も割合も一番多いですね。

 

こうして見ると、どの学校も帰国子女を全体の10%から20%にしようとしているようです。その上で、英語入試で入学した生徒に対してどのようなサポートをしてくれるのか、どのように英語教育を行うかは次の3パターンに分かれていると思います。

①グローバルコース等の名称で国際学級をつくる

②一般生と同じクラスで英語だけでなく算数国語もレベル別授業を行う

③一般生と同じクラスで英語のみレベル別の取出し授業を行う

勉強の面からみれば①が最も手厚く、②がその次ということになります。ただ、様々なタイプの人と接するためには国際学級ではなく、一般生と同じクラスになって机を並べた方がいいという考えもあるので、②のタイプも帰国子女に優しいと言えると思います。③の場合は、英語以外の科目で一般生についていけるように最初のうちは苦労するのではないでしょうか。

 

では、帰国子女に対して実際どのようなサポートをしているのか、それ以外の特徴と共に何校か見ていきます。まず、帰国子女の中学受験⑭では新興校の先鞭をつけた渋渋から見ていこうと思います。