帰国子女の中学受験⑮ 広尾学園

 今回は、新興校の帰国子女受入校の中で渋渋に次ぐ知名度と思われる広尾学園について書いてみます。

 

①沿革

1918年に順心女学校として設立され、2007年に順心女子中学校・高等学校を共学化して広尾学園中学校・高等学校に改称。2012年に現在の校舎が完成しています。

②概要

場所は港区南麻布、広尾駅からすぐの立地です。周囲には各国大使館や有栖川宮記念公園などがあり、セレブ感があふれています。やはりこの立地だと広いグランドなど持てません。私にはイメージできませんが、9階建ての校舎の3階にグランドがあるそうです。体育館も校舎内。テニスコートは屋上でプールはありません。一部の運動部は外部の施設で練習することもあるようです。カフェレストランは中学生から利用可能です。その他の施設では、サイエンスラボやICTルームがあります。

1学年の生徒は約250名。1クラス平均40名ほど。女子校だったころの名残なのか女子150名男子100名ぐらいの割合です。コースは医進・サイエンスコース、本科コース、インターナショナルコースに分かれています。医進・サイエンスは、医学やサイエンスへの興味を軸に、医系理系大学進学を可能にする実力をつけながら、同時にマインドの育成を行うコース。本科コースは最もスタンダードなコースですが、学習の進度は一番早いそうです。インターナショナルコースは、英語力のある生徒を集めたアドバンストグループ(AG)とこれから語学力を付けようとしているスタンダードグループ(SG)の二つに分かれています。SGは中学までしかなく、高校はAGのみ。高校進学時にコースの変更が可能なようです。

③教育目標

 「自立と共生」を教育理念としています。自発的な挑戦を促し、切磋琢磨し合える環境を提供。グローバル化が進み、多様性が求められる時代を生きるために、本物に触れ、ものごとの本質を追究する学びを提供しています。

ホームページの比較的わかりやすい場所に教育目標または理念が記載されている学校がほどんどなのですが、広尾学園は探すのが大変でした。これは、学校として全体的な理念より個別の教科や学習を重視していることの表れでしょうか⁇

④帰国子女のケア

英語教育はかなり充実しています。

AGは英語以外の授業もほとんどが英語で行われ、日本語なのは国語と社会科の一部のみ。体育等で本科コースの生徒と一緒に行う場合は日本語での授業となります。当然、大勢のネイティブ教員がおり、単に英語教育を行うというだけではなく、それぞれ専門分野があるそうです。授業以外にも、短期留学制度が用意されています。

帰国子女の中には英語以外の教科で日本の進度にキャッチアップできていない場合は、個別に補講等でケアしていただけるようになっています。

AG以外のコースでも、ネイティブ教員による授業があり、先進的な英語教育が行われているようです。

⑤その他の特徴

決定的な人物との出会い、決定的なプログラムとの出会いの機会を豊富に創出するという考えのもと、様々な取り組みが実施されています。「第一線を知る講座」という、正に各分野の第一線で活躍されている方による講演。「訪問見学講座」という難関大学のキャンパスや研究室を訪問するツアー。「自らが体験して学ぶ体験講座」というDNA鑑定やロボット・プログラム等のサイエンス講座や裁判の傍聴、世界的なコンサルティングファームでのインターンシップなどなど、多彩なプログラムが実施されています。

毎朝10分、生徒個人の進度に合わせたテストを行っています。翌日までに採点され、不得意分野の解消と学力定着のための課題が作成されます。週ごとに成績が確認され、期末には学期全体の成績表と復習問題集が配布されます。

 

⑥進学実績

2020年は、国公立合格者が71名、医学部合格者が40名となっています。ただし、医学部合格者は約半数が浪人です。その他、早慶に120名強と、難関大学に多数の合格者を出しています。

国内の大学への進学実績も素晴らしいのですが、この学校の特徴は海外大学への進学実績ではないでしょうか。2020年は78名の海外大学合格者が出ています。アメリカ、カナダ、イギリスを中心に、オーストラリア、スペイン、中国等、様々な国の大学に合格しています。 海外大学への進学には、外国人教員がチームになってサポートしてくれます。

⑦入試

 2021年度の帰国子女入試は12月17日と18日でした。AGが17日、それ以外のコースが18日です。18日は国、算、面接というオーソドックスな試験ですが、17日のAG入試はかなり特徴的です。Englishが50分(100点)、Math(英語で出題される算数)が50分(50点)、Japanese(日本語による出題)が30分(50点)というテストです。面接は英語と日本語で個人面接です。特に算数が英語で出題される学校は他にないのではないでしょうか。ただ、英語で出題されるものの、難易度は18日の通常の算数より低いと言われています。

その他に、一般入試枠ですが、2月2日午後にAGの入試が行われます。科目や配点は帰国子女枠のAGと同じです。

 

この学校に対する私の感覚は、正直に言うと受験予備校みたいだなっていう感じです。確かに英語教育や帰国子女にたいするケア、海外大学への進学実績やサポートなど、先進的な取り組みをされていると思います。ただ、中高6年間という多感な時期にね~~どうなんでしょうか。

あと一つ気になるのは、学費がちょっとお高いです。私が調べた帰国子女受入校の範囲では慶應SFCに次ぐ高さです。お金をかけてでも高度な教育を受けさせたいという考えの方には非常にいい学校だと思いますし、それゆえに人気も高くなっているのだろうと思います。