帰国子女の中学受験⑯ 東京都市大学付属中学校

次に、現在記載を予定している新興校で唯一の男子校である東京都市大学付属中学校です。

①沿革

1950年代に武蔵工業大学附属校として設立。2009年に武蔵工業大学が東横学園女子短期大学との統合で東京都市大学に改称したことから、中学校も東京都市大学附属中学校に改称。翌2010年に高校の募集を停止し、完全中高一貫校となっています。東横学園女子短期大学の付属校は東京都市大学等々力中学校に改称して、女子校から共学化していますが、東京都市大学付属中学校は男子校のままです。

②概要

成城学園前から徒歩10分ほどの場所にあり、東宝のスタジオのすぐ近くです。現在の校舎は2007年に完成しています。グランドは全面人工芝で照明付き。体育館やトレーニングルームの他、1100人収容のホール、シアター、カフェテリアなど、様々な施設が完備されています。ただし、プールはないようです。

1学年250名程度で6クラス、始業は8時半。制服は学ランです。入学時のコースはⅠ類とⅡ類の2つで、Ⅱ類が最難関国公立大コース、Ⅰ類が難関国公立私大コースです。これが高校3年時にはⅡ類が理系文系に、Ⅰ類が国公立理系及び文系、私大理系及び文系の合計6コースに分岐します。部活動にも全力で取り組むのが学校の方針のようで、学業との割合は100:100だそうです。種類も豊富で、自動車部やアイスホッケー部等、他行にはあまりないような部活もあります。

③教育目標

 高い次元で国際社会に貢献できる人間力を育むことを目標としています。また、誠実・遵法・自主・協調を校訓としています。

④帰国子女のケア

帰国子女の数は1学年に40名から50名ほどですが、クラスは一般生と同じクラスとなります。英語の取出し授業は1学年に30名強が参加します。1週間に4時間、ネイティブ教員によって、海外現地校同一学年レベルの授業を実施しています。英語以外の授業は一般生と区別しないそうですが、苦手な科目は基礎補習を受けることができます。

取出し授業以外では、海外の提携校からのホームステーの受け入れ、夏休みの語学研修、アメリカ研修旅行、ターム留学などの国際交流イベントがあります。 

⑤その他の特徴

自ら考え、探求し、表現する力を伸ばすため豊富な科学実験を取り入れています。科学実験はクラスを2分割した少人数制で、中学3年間で60テーマの実験を行います。必ずレポートを提出し、添削指導が受けられるので、理系に進まない人も論理的思考や記述能力が高まりそうです。

進路指導は中学の早い段階から始まりますが、最初は「社会人とは」「仕事とは」という大学のその先の将来像に目を向けるところからスタートし、マナー研修やこれまでの自分の振り返り、社会人へのインタビュー、企業研修などが行われます。また、志望大学、学部、学科を見つけるため、大学教授による模擬授業を受けたりキャンパスツアーが行われます。その他にも多くの講演会が開かれ、将来のことを考える機会が作られているようです。

⑥進学実績

直近では国公立大学へ現役で66名。内、東大4名京大2名の合格を出しています。医学部へは14名合格していますが、現役と既卒の別は記載されていませんでした。私立大学は明大が112名で最多。早稲田63名、理科大56名と続きます。海外大学への進学については、海外大学進学協定校推薦入試制度を導入しているそうですが、進学実績は特に記載されていませんでした。

⑦入試

 2021年度の帰国子女入試は、1月6日です。受験科目に英語が含まれるA方式と英語がないB方式があります。A方式は国語型と作文型に分かれます。つまり、A方式は算英国か算英作文となります。B方式は国算の2科目と理社を加えた4科目の選択です。

国語型の受験は、算英または算国の合計点で合否判定が行われるようです。

A方式の英語は英検準一級レベルの問題とのことです。また。算数については一般入試より難易度が下がっていて、一般入試用の問題で50%ほど取れていればよいそうです。一般入試の50%は帰国入試の60%と同等とのことでした。

また、2月2日にグローバル入試という試験があります。こちらは、英算作文の3科目受験で、英語のレベルは英検準二級程度とのことです。

どの試験もⅠ類とⅡ類を選択して受験できますが、Ⅰ類で受験してもⅡ類の合格基準に達していればⅡ類合格となり、逆にⅡ類で受験して不合格でもⅠ類の合格基準に達していればⅠ類合格となります。

過去問や入試結果がホームページでオープンにされています。平均点だけでなく、合格最低点も開示されています。それだけではなく、出題の狙いや問題ごとの合格者の得点率まで開示されています。かなり参考になるのではないでしょうか。

なお、複数回受験によって加点があります。3回受験で+3点、4回受験で+5点です。

 

ざっくりと特徴を見てきましたが、勉強だけでなく部活にも力を入れていたり、進路指導でマナー研修があったりと個人的にはかなり共感できる部分が多いです。帰国子女の人数も多いですし、フォローもしっかりしていると思いました。入試難易度も広尾学園よりは入りやすそうですし、いい感じではないでしょうか。

また、通常の学校は合格後すぐに入学金を納入する必要がありますが、こちらの学校は手続時には5万円のみで残りは4月に納入すればOKです。つまり、合格後さらに志望順位の高い学校を受ける場合にも、どの学校に行こうか迷っている場合にも経済的に優しいということですね。ありがたいです。