帰国子女の中学受験㉖ 米国の大学進学に関するトピック

今回は、米国大学進学セミナーを聞いたので、その話をしてみます。

米国生活に慣れてくると、子供たちは「日本に帰りたくない」とか「アメリカの大学に行きたい」とか言うようになります。なので、どんなもんなのか全く前知識のないままセミナーを聞いてみました。

 

今回の大きなトピックは次の2つでした。

・コロナ禍で、どのような対応がされていたか

・アドミッションテスト(SAT、ACT)の動き

 

まず、コロナ関連で、対面授業の割合やPCR検査の頻度、カリキュラムの変化等の話がありました。これらに関しては、来年か再来年あたりまで影響があるかもしれませんが、今から中学受験をする子供たちが大学生になるころには、さすがに終息していると思うので記載しません。

 

次に、アドミッションテストについての話がありました。

難関大学のアドミッションテスト離れが起こっているそうです。

これまでは米国の大学受験といえばSATスコアが重要だというイメージを持っていましたが、それが大きく変わっているようです。つまり、SATスコアの提出を任意にしたり、逆に受け付けないという学校が増えているということです。このような変化が起こった理由はいくつかあるようですが、アドミッションテストは生徒の将来性を見極めるのに不十分という判断や、公平性に欠け差別に当たるという判断があったようです。

差別に敏感なアメリカでは、「差別だ!」といわれる状況はすぐに解消しようとするようです。特にカリフォルニアでは裁判所がカリフォルニア大学(UCLAやUCバークレーなど10校)に対して入学や奨学金決定にアドミッションテストのスコアを考慮することを禁止する仮差止命令をだしたそうです。アドミッションテストの何が差別的なのかということですが、SATは有料のテストで何度も受験できるため、受験の準備をしっかりして何度も受験できる富裕層に有利だというのです。実際に高得点を取っている層には富裕層が多く、得点が低い層には低所得家庭が多いというデータがあるそうです。

 

確か、日本でも2020年度からの大学入学共通テストで英語の外部テストを利用するのが見送られましたよね。これも住んでる場所や収入で格差が大きくなるという論調が強くなり、大臣が「身の丈に合った・・・」とか言っちゃって、見送りになったと記憶しています。これに対しては賛否あると思いますが、米国ではもっと激しく拒絶反応がでているということだと思います。

その結果、UCではアドミッションテストのスコアを提出できなくなり、同じカリフォルニアにあるスタンフォードではスコアの提出はできますが義務ではないという扱いになったそうです。他にも難関校を中心に任意提出や提出できないという扱いに変更した学校が多数あるようです。この流れは急速に広がっていて、数年後には現行のSATやACTはなくなるのではないかと予想されているそうです。

アドミッションテストスコアの利用を停止したUCの受験者数ですが、結果として16%もの大幅増だったそうです。これはマイノリティの受験者が増加した効果とのことです。

シカゴにある大学の実際の例では、アドミッションテストが任意になり、代わりにクリエイティブライティングプロジェクト、アート系のビデオ、ビジネスプラン、リサーチプロジェクト、APスコア、IBスコア、自己紹介ビデオなどが提出できることになっていたようです。

では、今後アドミッションテスト対策の代わりに何をするのか?ということですが、今回のセミナーでは以下のようにおっしゃっていました。

  • ハイスクールの学習に注力する
  • 課外活動で差別化(必ずしもボランティアである必要はない)
  • 大学のウェブサイトをチェック
  • オンラインツアーやバーチャルツアーを活用
  • アドミッションオフィスにコンタクトを取る

特に、最後のアドミッションオフィスにコンタクトを取っているかどうかは結果に明確な違いが出ているそうです。このような双方向アドミッションはトレンドになっていて、アドミッションオフィスを通して適切な部門に繋いでもらってコミュニケーションを取ることは必ず有利に働くとのことです。

双方向アドミッションが有利になる理由は、大学側は入学率を上げたいという誘因があるからだそうです。これは日本でも専願なら合格しやすい学校があったりするのでイメージしやすいかもしれませんね。アメリカでも入学率は大学のランキングに影響を与えたりするので重視されているそうです。

 

あとは、米国にかかわらず、日本でもどの国でも共通と思われることをいくつかおっしゃっていたので書いておきます。

  • 大学はゴールではなくキャリアのスタート
  • 将来の目標を実現する手段は様々
  • 長期的視野で大学進学を考える
  • 進学方法は一人ひとり異なる
  • 自分の強みを伸ばす

他にも色々お話がありましたが、中学受験から大分脱線してしまったのでこのぐらいにしておきます。