帰国子女の中学受験⑭ 渋谷教育学園渋谷中学

それでは、共学化および改称して国際教育を充実させることで人気校となっていった学校の代表ともいえる渋谷教育学園渋谷中学について見ていきたいと思います。

①沿革

 ご存じの通り、渋渋の前に渋幕の成功があります。理事長兼校長である田村哲夫先生が母校である麻布高校のような共学校をつくろうというコンセプトで1983年に渋幕高校を設立したそうです。「自調自考」を根幹とし、高い倫理観及び国際人としての資質を養うという教育目標で渋幕はあっという間に有数の進学校に。これをモデルとして1996年に渋谷女子高を共学校化し、渋谷教育学園渋谷高校に改称。以来、わずか20年強しか経っていませんが、こちらも有数の進学校となっています。

ちょっと気になったのは「自調自考」は麻布ではなく武蔵の教育理念だということ・・・まあ、どっちでもいいですね。共学校で自由な校風の進学校を作ろうとしたってことです。 

②概要

渋谷から徒歩7分、神宮前から8分という抜群の立地。さすがにこの場所で広いグランドは持てないようで、登戸にグランドがあるそうです。その他の施設としては、体育館2つ、ITC室2つ、カフェテリアなど。女子トイレだけでなく男子トイレにもパウダールームがあるそうです。

1学年約200人で5~6クラス。高校での募集はない完全中高一貫型です。始業は8:20。昼食はお弁当が基本ですが、売店での購入も可能。部活動は柔道部が全国レベルを超え、世界レベル。オリンピックメダリストも輩出しています。他にも模擬国連部が世界レベルです。

③教育目標

沿革のところに書いてしまいましたが、以下の3つです。

  • 自調自考・・・「自らの手で調べ、自らの頭で考える」を基本目標として、自分で調べ、考え、判断し、責任ある行動がとれる人材を育成する。
  • 国際人としての資質を養う・・・国際的な視野を持ち、他国の文化や他国の人々の考え方を理解できる人材を育成する。
  • 高い倫理観を育てる・・・自分を律する心を養い、一人ひとりの人生をより豊かにし、人のために役に立ちたいと思う人間を育む。

まず、自調自考というのが基本目標で、各教室に掲げられているそうです。そのため、生徒の自主性を大切にしていて、実際にかなり自由な校風となっているようです。また、帰国子女の受け入れや各種国際交流イベントで、留学生の受け入れ、第二外国語の学習などで国際人の資質を養成しています。

④帰国子女のケア

クラスは一般性と同じクラスで、国際学級はありません。英語はネイティブ教員による取出し授業で、北米の学校のような授業が行われるそうです。内容は様々なタイプの英文を読み、プレゼン、ティスカッション、タームペーパー作成等、英語を使うのではなく英語で考えるためのクラスのようです。また、英語で世界史を学習したりするようです。学校ホームページでは確認できませんでしたが、場合によっては国語と数学に関しては一般の生徒にキャッチアップできるまで別クラスがあるそうです。

その他に国際交流として留学生の受け入れや、中学でのオーストラリア研修、高校での渋幕と合同の海外研修があります。

⑤その他の特徴

渋渋の学習の特徴はシラバスの存在でしょうか。中学校からシラバスが用意されている学校は珍しいと思います。シラバスには各科目ごとに1年間で学習する内容と計画が細かく書いてあるので、生徒もそれに沿って全体像を確認しなら自調自考の精神で計画的に学習できるのではないでしょうか。

渋渋と渋幕の違いですが、学校の方は「渋幕は個人で頑張るタイプ。渋渋はチームで頑張るタイプ。」とおっしゃっていました。

⑥進学実績

 2020年は現役で東大27名。国公立に現役で82名だそうです。海外大学にも25名が合格しています。進学実績がいい一番の要因については、質のいい生徒が入ってくるからとおっしゃっていましたが、謙遜でしょうか。このレベルの学校になると自分で勉強できるという生徒しかいないのでしょうか。

⑦入試

まず、入試難易度は帰国子女受験の最難関に位置しています。帰国子女受験でここと同レベルもしくは上位となるのは関連校の渋幕、横浜の聖光ぐらいだと思います。

2021年度の受験日は1月27日。

受験科目は英国算+英語面接もしくは作文国算+面接。倍率は英語選択の方が若干高いようです。

募集人員は合計12名。2020年度合格者実数は英語選択者が27名。作文選択者が36名。

英語受験を選択した場合、英語の難易度は英検準一級を超えるレベルといわれています。中学受験にして大学受験を超える難易度ということですね。差が付くポイントはエッセイだそうです。エッセイは2問出題され、A41枚ずつ、2パラグラフ程度記載する。内容は時事問題からポエムまで幅広い出題。採点はネイティブ教員が行っています。

一方で算数国語は参考程度とのことです。どういうことかというと、英語の成績で上位30名程度を選抜し、そこから25名から30名が合格することになります。国語と算数は0点でなければOKとのことです。

グループ面接も英語で行われます。6名1組でディスカッション。ネイティブ教員主導で行われます。2020年度入試では王国を守る騎士を6人の中から3人選ぶというもの。だれを選ぶか話し合う。ポイントは、聞かれたことにしっかり答えられているかだそうです。

 

 

英語受験のレベルの高さがレベルの高い英語教育を可能にしているということだと思います。まあ、さすがにこのレベルの学校を私の子供に進めることはできないので、触れずにおこうと思います。