帰国子女の中学受験⑰ 海城中学校

あっという間に2020年も終わり、新年がやってきました。1月中に子供と今後の方針について話をしたいので、伝統校についてもいくつか見ておきたいと思います。まずは海城中学校です。

 

①沿革

1819年に海軍予備校として麹町に設立。1900年に海軍予備校から海城学校に改称。1927年に現在の場所に移転。2011年に高校募集を停止し、完全中高一貫校となる。設立当時から一貫して男子校です。

②概要

新宿区の新大久保から徒歩5分、副都心線西早稲田から徒歩8分という立地です。歴史のある学校ですが、施設の更新・新設は順次行われていて、平成以降も食堂棟が新設されたりグランドを人工芝に張り替えたりしています。山手線の内側としてはグランドも広く、体育館、プール等も完備しています。また、各理科科目の実験室を集約した理科館を建設中です。

1学年約330人で8クラス。始業は8時20分。カフェテリアは中学生から利用できるようです。制服は学ランです。入学時は特にコース分けはされておらず、高校2年時から理系と文系に分かれます。部活にも力を入れていて、競技かるた部やグローバル部(模擬国連)が活躍しているようです。珍しい部活としては、奇術部、アカペラ部、古典芸能部などがあります。

学校とは直接関係ありませんが、東大受験専門塾として有名な鉄緑会の指定校となっています。

③教育目標

教育目標はリベラルでフェアな精神を持った「新しい紳士」の育成、です。また、建学の精神は「国家・社会に有為な人材の育成」です。海軍予備校だったので、違和感はありませんが、グローバル化にあわせて「有為な人材」を「新しい人間力」と「新しい学力」をバランスよく兼ね備えた人材と定義しています。

学校の方の話では、東大で留年している生徒の中で、海城出身者の割合が高かったという調査があり、大学進学だけではなくその先も見据えた教育をするために様々な取り組みをしているそうです。

④帰国子女のケア

帰国子女だけの国際クラスの設定はなく、一般生と同じクラスになります。これは、一般生と帰国生がお互いに高め合うためとのこと。完全一貫校化したため、生徒の多様性という面で帰国生への期待が高まっているそうです。英語はネイティブ教員による少人数の取出し授業があります。その他にも授業外で海外大学を目指すような人向けのアドバンス講座が設定されています。イベントとしては国内で行うオール英語のイングリッシュキャンプ、中3時のアメリカ研修、高1or2時のイギリス研修などが行われています。また、帰国子女には担任や教科担任だけでなく、グローバル教育部の教員が勉強とメンタルの両面をサポートしてくれます。

⑤その他の特徴

③で記載した通り「新しい人間力」と「新しい学力」をもった人材を育成するために様々な取り組みをされています。

「新しい人間力」はコミュニケーション能力とコラボレーション能力を兼ねそろえた力で、共生・協働の力が求められます。これに対応するための取り組みがいろいろあるようですが、イベントとしてはプロジェクトアドベンチャーというチームでアスレチックフィールドの課題に取り組む活動や、ドラマエデュケーションというグループで演劇を創作、発表する過程で価値観の相違や対話的コミュニケーションを学ぶプログラムがあります。

「新しい学力」は課題設定・解決能力です。これには、自ら課題を設定し、情報を収集・分析して価値評価し、導き出した解をわかりやすく伝えるという総合能力が必要となります。そのための取り組みも様々なものがあるようですが、イベントとしては社会科総合学習や理科の実験・観察・野外観察があります。特に社会科総合学習は、自らテーマを設定し、情報収集し、その専門家や企業に自らアポイントを取って取材したうえでディスカッションし、自分なりの解をレポートにまとめます。

これらの取り組みの他にも、医学部志望者に向けた理社国連携の特別講座である「医学部小論文・面接講座」など独別な講座もあるようです。

⑥進学実績

進学実績は帰国子女受入校の中ではトップクラスでしょう。現役で東大38名を含む、131名が国公立に合格しています。しかも、その内30名が医学部(東大理Ⅲ2名含む)。

既卒では66名が国公立に合格していますが、逆に考えると少なくともそのぐらいの人数は現役進学しないということですね。

私立も現役だけで早稲田97名、慶應69名など素晴らしい進学実績です。また、私立の医学部には現役で51名が合格しています。

海外大学は、ハーバードに1名合格しています。なお、2019年は北京大学に1名合格していました。

⑦入試

2021年の受験日は1月7日です。受験日が横浜の聖光と重なることがあり、その年は受験者が減少します。試験科目は国算面接のA方式と、国算英面接のB方式があります。英語は自由記述の作文です。英語は文法やスペリングではなく、相手に伝わる論理的文章がかけているかがポイントとのことです。国算はAB共通問題で一般入試と同レベル。算数は帰国子女入試のみ過程を記載する記述欄があるそうです。なお、国算は一般入試の問題で60%程度がボーダーになるそうです。

面接は段階評価ではなく24点の配点があります。冒頭に「生活していた国や地域と日本との違い」についての2分間スピーチがあります。

 

当初この学校に対する印象はゴリゴリの進学校でしたが、いろいろな取り組みなどを見てみると、生徒の将来のために工夫されたイベントが多く用意されていて、しかも楽しそうだなと感じました。入試の難易度は高いですけどね。。。